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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と妊活【その1】:新型コロナウイルスと妊娠への影響は?

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

皆さんこんにちは。
現在、世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が急速に拡大し続けており、日本でも令和2年4月7日に緊急事態宣言が発出されました。

当初、5月6日までの予定とされていた政府による緊急事態宣言期間も、暫定的に1ヶ月程度の延長が決まり、今なお予断を許さない状況が続いております。

このような背景もあり、妊活や不妊治療をされている方の多くが、「このまま妊活を続けても大丈夫なの?」「外出自粛と言われているのに病院に通っても良いのかな?」と様々な不安を抱えられているかと思います。

今回は、妊活中の方々が、COVID-19にどのように向き合ったら良いのか、改めて理解を深めていただくために、

【その1】新型コロナウイルスがどんなウイルスで、妊娠にはどのような影響があるのか。
【その2】現在の状況下において、妊活を継続していくとどのようなリスクが伴うのか。
【その3】妊活をストップした場合、再開するタイミングの目安はいつ頃なのか。

について、4月1日付で発表された日本生殖医学会の会告を基礎に、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)ならびにアメリカ生殖医学会(ASRM)の見解を加えながら、【その1】~【その3】の3つのステップでお伝えします。

新型コロナウイルスってどんなウイルスなんだろう?

今回の新型コロナウイルスは、正式にはSevereAcuteRespiratorySyndromeCoronavirus-2(SARS-CoV-2)という名称のウイルスです。このウイルスの感染によって引き起こされる病気を、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)と言います。

SARS-CoV-2は、重篤な急性呼吸器症候群を引き起こす非常に感染力の高い強力なウイルスとして、世界中で感染が拡大しています

ここで、ウイルスの名前を聞いて「おや?」と思った方がいるかもしれませんが、このウイルスに付けられた“SARS”という名前、実はSARS-CoV-2は、未だ記憶に新しく2002年に世界的な感染拡大で知られたSARSと非常に似たタイプの、人間に感染するコロナウイルスなのです。
ちなみに、2002年にSARSが流行した際には、感染が収束するまでに約1年という長い期間を要しました。

COVID-19については、3月11日に、世界保健機構(WHO)がパンデミック(感染の世界的大流行)を宣言し、日本においても4月7日に緊急事態宣言が発出されました。

SARS-CoV-2の感染によるCOVID-19の死亡率は、インフルエンザの約10~15倍であることが示されており、SARSやMARS(中東呼吸器症候群;コロナウイルスの一種で、ラクダからヒトへの感染が確認された)など過去に流行したコロナウイルス感染症と比較しても有意に高く、特に高齢の患者では重篤化しやすい傾向があると報告されています。

妊娠中の女性(あるいは妊娠を目指している女性)は危ないの?

日本産科婦人科学会は、「現時点では、インフルエンザのように、特に妊産婦における重症化や死亡率が特に高いという報告は無い」という見解を示しています。

また、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)は会告の中で「COVID-19が妊婦に対して悪影響であるという強い証拠は、現在のところはまだ見つかっていない」としながらも、COVID-19に罹患した妊婦では早産(膜の早期破裂)の傾向があることや、母体から乳児への垂直感染が疑われる症例があったことを報告し、「実際の影響については、現状では症例が極めて少なく、母子ともにどのような障害があるのかは未知数である」としています。

多くの見識者は、過去に、SARSやMARSが流行した際に、子宮内からのウイルス検出や、流産、早産、胎児発育不全、胎児死亡、新生児死亡、母体死亡などに関する報告が非常に多くあったため、今回のCOVID-19においても、今後そのような報告が次々と出てくる可能性があるのではないか?ということを懸念しています。

男性にも影響はあるの?

SARS-CoV-2は女性よりも男性の方が感染しやすい傾向にあり、中国・広州医科大学の感染症専門チームが発表した論文によると、中国やイタリアではおよそ3対7、エジプトやお隣の韓国ではおよそ4対6の割合で、男性の感染者の方が多いことを発表しています。

男性のウイルス感染症(特に、おたふく風邪を引き起こすムンプスウイルス)は、生殖内分泌系や造精機能そのものに影響を与え、無精子症など男性不妊の原因となることが知られていますが、アメリカ生殖医学会(ASRM)の発表によると、COVID-19に罹患した患者の約17.6%に生殖機能に低下傾向が認められたと報告しています。

一方で、こちらも症例数が極めて少ないことや、精液中にウイルスが検出されていないことなどから、「ムンプスウイルスのように、男性不妊の原因となることが知られている精巣炎を引き起こす可能性についての判断は時期尚早である」としています。

さて今回、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と妊活【その1】では、新型コロナウイルスがどのようなウイルスなのかについてお伝えしてきましたが、知っていたようで意外と知らなかったこともあったのではないでしょうか?

WHOより3月11日にパンデミックが宣言されてから2ヶ月が経過しましたが、まだまだ妊産婦でのCOVID-19症例が少なく、世界的に見ても、どのくらい危険なものなのか?といった判断がついていない一方で、過去のコロナウイルス感染症と比較しても死亡率が顕著に高い傾向にあるという非常に怖い感染症でもあります。

特に妊娠を目指している皆様におかれましては、この未知のウイルスに立ち向かうため、常に最新の情報に耳を傾け、手洗いの徹底や、不要不急の外出、いわゆる「3密」を控えるなど、まずは『自分が感染しないための行動』と『他者を感染させないための行動』を心がけるようにしましょう。

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川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

埼玉医科大学を卒業後、総合病院勤務を経た後に、国際基督教大学(ICU)大学院博士前期課程へと進学。アーツ・サイエンス研究科にて生命科学を専攻。大学院修了後は、加藤レディスクリニック(新宿区)に勤務。同クリニックの系列病院となった中国上海永遠幸婦科医院生殖医学センターへ出向し、病院の立ち上げに携わるとともに、現地スタッフの育成・指導や培養室の運営などを行う。 その後、2018年に東京都渋谷区に新規開院となった桜十字渋谷バースクリニックに培養室の立ち上げスタッフとして赴任。培養室主任を務め、指導要領の作製や培養室の運営管理とともに、生殖医療関連のセミナーにて講演を行うなど、精力的に活動。 現在は、千葉県船橋市に所在を置く船橋駅前レディースクリニックにて、培養室室長に就任。